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新聞の書評で読んで気になっていたので、ジュンク堂に寄ったついでに購入。
イタリア小説は殆ど読んだことがないので、ともかく読んでみようと思ったのですが、ひとつのきっかけになったのは「神秘的、幻想的な作風でカフカの再来と称される」という、カバーの説明文です。

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冒頭、中尉になってはじめての赴任地へ意気揚々と出向いていく主人公ジョバンニ・ドローゴ。しかるにその砦は、町の日常からは隔絶され、意地悪い規則に縛られ、そして前方に広がる砂漠地帯から来るといわれているタタール人の襲来を、不安とともに唯一の希望としている異様な場所であって、ドローゴはただちに町へと転任を望みます。けれどいざそれがかないそうになった瞬間に、やはり彼はこの砦に漂うタタール人の幻想が惜しくなって、出て行かない。4年後、もう我慢したから十分だろうと転任を希望するけど、これが理不尽にも認められない。このへん、カフカの『審判』じみて見えないこともない。
配属されてからの4年にページの3分の2以上が費やされ、残りであっという間に20年以上経過する構成で、ところどころ幻想的な場面もあるけど読みづらさはなく、砦の周辺の様子は本当にリアルで、特に、無理な行軍の末、雪の山頂で、カードゲームをするふりをしながら凍死する将校の描写など印象的です。

ドローゴは軍人だけど非常に正直で善良すぎるところもあって、こんな砦に配属されて、それでも出世して町へ戻るとか、司令官になって何も来ない砦で快適に過ごすとかいう器用な切り替えができません。その上、砦の汚点となった2人の人物の死もなぜか自分の落ち度にされていると気付いても、それは自分じゃないときっぱり否定したり、間違いをたださせたりしません。たしかに砦を出るつもりで全然出られない人はほかにも一杯いるし、かれらの人生もドローゴのと似て、消耗し、理不尽な扱いを受け、しかもそれを受け入れてしまっている。ドローゴも単にそういう1人になってしまって、まだまだと思っているうちに、もうやり直しがきないところに来ている。

物語の最後になっても、つまんない司令官の下の身分に甘んじ、肝臓病でやせこけて、待ち望んだ敵の襲来が現実になるその瞬間になって厄介払いされ、宿泊先の旅籠の部屋で死が間近なドローゴ。そこだけ見ると悲痛でさえあるのだけど、でもなぜか、そのあたりのドローゴは砦に来て以来一番立派な態度に見えました。
そして、殺伐とした砦と違い、その旅籠の部屋には恋の歌が聞こえてきています。カフカの不条理は読み終えて苦いものが残ったりする(そこが魅力でもある)けど、その点はこの作者のは、切なくも暖かい冬の光が射すようです。
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